個人再生は、現在抱えている借金を最大で1/10まで減額できる上、住宅を手放す必要がない。というメリットがあります。しかしながら、手続きは非常に複雑で個人では到底処理できるものではありません。
そのため、弁護士に個人再生を依頼することが一般的ですが、実際にどのような流れでどのくらいの期間が必要になるかは不明点も多いことでしょう。
そこで今回は、個人再生の流れと必要期間をまとめて解説したいと思います。また、裁判所によって手続きの流れは変動することから本記事では東京地方裁判所を基準に解説を行います。
Contents
- 1 個人再生の流れと手続き期間
- 2 個人再生の流れ
- 2.1 1.弁護士の無料相談で個人再生の相談をする
- 2.2 2.弁護士と委任契約を締結する
- 2.3 3.受任通知の送付及び取引履歴の開示請求
- 2.4 4.債務調査及び過払い金返還を行う
- 2.5 5.家計の収支調査
- 2.6 6.財産及び資産の調査
- 2.7 7.小規模個人再生または給与所得者等再生を選択する
- 2.8 8.個人再生の申立書を作成する
- 2.9 9.個人再生の申し立てを行う
- 2.10 10.個人再生委員が選任される
- 2.11 11.個人再生委員と面談を実施
- 2.12 12.履行可能性テスト(トレーニング期間)の開始
- 2.13 13.個人再生の手続きの開始が決定される
- 2.14 14.債権届出及び債権調査
- 2.15 15.債権認否一覧表・報告書の提出
- 2.16 16.再生計画案の作成
- 2.17 17.再生計画案の提出
- 2.18 18.再生計画案の決議
- 2.19 19.弁済開始
- 2.20 20.完済
- 3 個人再生の手続きに必要な書類
- 4 まとめ
個人再生の流れと手続き期間
個人再生の申し立てから手続き終了までのおおまか流れと期間をお伝えしたいと思います。
はじめに、個人再生は弁護士と代理人契約を締結する必要がありますので、無料相談を経て委任契約を締結することになります。
弁護士選びは料金だけでなく実績も豊富にあることが条件になりますので、しっかりと比較を行うことを考えると1ヶ月程度の期間は必要になります。
その後、受任通知の送付、収支や財産の調査、申立書の作成などを行うことから追加で1ヶ月程度の時間が必要になります。
ここまでが、個人再生の準備期間になります。
個人再生の申し立てをすると審議期日が約1ヶ月後に設定されます。その後、2ヶ月〜3ヶ月後に再生計画案の提出期日が指定され債権者の書面決議や意見聴取などを経て、開始決定後約2ヶ月で認可がおります。
従って、個人再生は専門家選びから再生計画の認可までに6ヶ月〜8ヶ月程度の期間が必要になります。
個人再生の流れ
さて、ここからは個人再生の流れをより詳しく解説したいと思います。大きく20の流れからなる個人再生の手続きは非常に複雑であるため、弁護士に依頼することが望ましいと言えるでしょう。
ちなみに、個人再生は弁護士だけでなく司法書士も代理人になれるのですが、対応できる業務範囲が限定的でありながらも総額費用があまり変わらないことから弁護士に依頼すると良いでしょう。
1.弁護士の無料相談で個人再生の相談をする
通常、法律事務所に債務整理の相談を行うと30分5,000円が相場となっております。従って、複数の事務所を比較するだけでお金をどんどん失ってしまうことから個人再生をする前に破産してしまう可能性が高まります。
そこで、個人再生の相談が無料である法律事務所に限定し相談を行うことが重要になります。
その際、相談料無料にも「初回相談無料」と「何度でも相談無料」の2種類がありますので、選び方のポイントは「何度でも相談無料」の事務所から話を聞く。という点です。
初めて、個人整理をする場合、緊張や不安から「聞き漏れ」や「伝え漏れ」などが発生してしまう可能性があります。
そこで、「何度でも相談無料」の法律事務所から話を聞けば、仮に「聞き漏れ」や「伝え漏れ」があったとしても再度無料で相談することが可能になる。という訳です。
個人再生におすすめな法律事務所は「2023年版|個人再生の評判が良いおすすめ弁護士事務所を5社まで厳選」にて紹介をしておりますのでご参照ください。
2.弁護士と委任契約を締結する
個人再生を依頼する弁護士を決めたら委任契約を締結しましょう。
個人再生の費用相場は総額で50万円〜80万円程度になりますので、分割払いまたは後払いを認めている法律事務所を選択することが重要になります。
裁判所に支払う費用 |
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弁護士に支払う費用 |
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住宅ローン特則の費用 |
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詳しくは「個人再生の費用相場はいくら?弁護士と司法書士の料金を徹底比較」をご参照ください。
3.受任通知の送付及び取引履歴の開示請求
個人再生の契約を弁護士に依頼すると債権者に対して受任通知を送付してくれます。これによって、債権者からの直接的な取り立ては停止します。
一般的な弁護士事務所であれば、契約した当日中に郵送やFAXなどによって受任通知を送付してくれますので、担当部署へ通知が回覧されるまでの期間を含めて3日程度で取り立ては停止することになります。
また、受任通知と一緒に取引履歴の開示請求も行います。取引履歴の開示請求はこれまでの債権の金額や内容など記載された物になり過払い金の有無などを調べることに活用されます。
4.債務調査及び過払い金返還を行う
債権者から提出された取引履歴をもとに債権額やその内容を調査し利息の引き直し計算を行います。過払い金が発生している場合は返還請求を要求することになります。
これによって、借金総額を大きく減額することも可能になりますので重要な手続きと言えるでしょう。(借金を大きく減額できる場合は、個人再生ではなくよりデメリットの少ない任意整理でも借金問題を解決できる可能性があります。)
過払い金返還請求は、交渉によって返還金額を決めることが一般的ですが、交渉では決着しない場合、訴訟を提起し過払い金を回収することもあります。
5.家計の収支調査
債権調査と同時並行であなたの収入や支出などの家計調査も実施します。
弁護士から「収入証明(給与明細・源泉徴収票・確定申告書・課税証明書等)や家計簿を提出してください」と言われますので準備しておきましょう。
6.財産及び資産の調査
債権調査、収入調査に加えて「財産及び資産状況の調査」も並行して行われます。
財産及び資産状況の調査では、「通帳」「保険証券」「車検証」「不動産登記簿謄本」「財産の査定書」など資産に関する書類の提出が求められます。
必要書類は本記事の下部にまとめて掲載をしております。
7.小規模個人再生または給与所得者等再生を選択する
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つの種類がありますが、それぞれどのような違いがあるのか該当条件を確認してみましょう。
個人再生の種類 | 主な対象者 | 利用条件 |
小規模個人再生 | 自営業者、会社員、公務員、パート、アルバイト |
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給与所得者等再生 | 給与所得者(会社員、公務員、パート、アルバイト)*自営業者は不可 |
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先ほどの債権調査,資産調査,家計状況の調査結果は、個人再生のどちらの手続きを適用されるのかの判断材料として活用されることになります。
8.個人再生の申立書を作成する
個人再生を行うためには申立書の作成が必要不可欠になります。
基本的には弁護士が代理人として作成してくれますので難しいことは一任すれば大丈夫と言えますが、申立書には以下の必要書類を添付する必要があります。
- 収支に関する資料
- 資産に関する資料
- 住宅や住宅ローンに関する資料(住宅ローン特則を利用する場合)
- 債権者一覧表
必要書類は本記事の下部にまとめて掲載をしております。
9.個人再生の申し立てを行う
管轄する地方裁判所に個人再生の申立書を提出することで申し立てが完了します。
申し立てをする際は、手数料(収入印紙で納付)や郵便切手も合わせて添付することになります。また、申立書が受理されると官報広告費を予納することになります。
- 申立て手数料(収入印紙):10,000円
- 官報公告費用としての予納金:12,000円
- 予納郵券(連絡のための郵便切手代):4,000円~8,000円程度
10.個人再生委員が選任される
申し立てが受理されると、その日の内に個人再生委員が選任されることになります。
裁判所によっては個人再生委員が選任されないところもありますが、東京地方裁判所では全ての個人再生案件に個人再生委員が選任されることになります。
個人再生委員が選任されると、裁判所から個人再生委員がどのような人なのか連絡が入ります。その上で、個人再生委員に申立書の副本を郵送するとともに面談の日程を決めることになります。
- 申し立てをした当日
11.個人再生委員と面談を実施
個人再生委員との面談は、申し立てから1週間以内に行うことが原則となります。面談場所は個人再生委員の弁護士事務所で実施されるケースが一般的です。(個人再生委員は弁護士になります)
個人再生委員との面談では、申立書の内容確認と必要書類の不足などの指摘がされることになります。その他、個人再生の手続きを開始するに相応しいのか判断するために複数の聴取が行われることになります。
- 申し立てをしてから1週間以内
12.履行可能性テスト(トレーニング期間)の開始
東京地方裁判所の場合、個人再生で減額できた借金をしっかりと弁済することが出来るのか判断するために「履行可能性テスト(トレーニング期間)」が設定されています。
履行可能性テストは、個人再生の認可が決定するまでの間、個人再生委員が指定する銀行口座に返済予定額と同額の予納金を6ヶ月間振り込みすることになります。
初回の振り込みは、個人再生の申し立てから1週間以内に振り込みする必要があります。2ヶ月目以降は毎月いつまでに支払う必要があるのか個人再生委員の指示に従うようにしましょう。
- 初回振り込み日:申し立てから1週間以内(2ヶ月目以降は再生委員と相談)
- 履行可能性テストの継続期間:6ヶ月間
13.個人再生の手続きの開始が決定される
個人再生委員との面談が終了し、初回の履行可能性テストの予納金振り込みも完了すると、個人再生委員が手続きを開始するべきか否かについての意見書を裁判所に提出することになります。
裁判所は個人再生委員から提出される意見書を基に、個人再生の手続きを進めるか判断することになります。ここで、個人再生を行うことが「相当」と判断されれば手続きが正式に開始されることになります。
ここまでに、申し立てから4週間ほどの時間が経過していることになります。
- 申し立てから4週間後
14.債権届出及び債権調査
個人再生の開始が決定されると債権者から債権届出が提出されることになります。
個人再生の場合は、この債権届出の管理を債務者本人が行うことになりますが、弁護士に依頼している場合は弁護士が管理を行なってくれます。
債権届出が届くまでの期間は、申し立てから8週間ほどの時間が経過していることになります。
- 申し立てから8週間後
15.債権認否一覧表・報告書の提出
申し立てから10週間程度に債権認否一覧表・報告書の提出期限が設定されています。
債権認否一覧表とは、債権者から送付されてきた債権届出に記載される金額をもとに、その再生債権の金額を認めるか認めないかの認否を記載します。
再生債権とは,再生債務者(個人再生を申請した債務者)に対する再生手続開始前の原因に基づく財産上の請求権を指しております。(民事再生法84条1項)
そして,この再生債権を有する債権者のことを「再生債権者」といいます。
再生債権の金額に異議がある場合は、一般異議申述期間と呼ばれる期間内に書面で異議を述べることが可能になります。
また、申し立て時点から財産状況などに変化があった場合はその旨を報告書に記載するようにしましょう。
- 申し立てから10週間後
16.再生計画案の作成
再生債権額が判明したら、再生債務者はどのように借金を返済していくのかを記載する再生計画案を作成することになります。
再生計画案には「弁済総額」「弁済方法」「住宅資金特別条項」の利用なども記載する必要があります。この辺りは、個人再生を依頼した弁護士とよく相談するようにしましょう。
- 弁護士により変動
17.再生計画案の提出
再生計画案の作成が完了したら、特別の事情がある場合を除き,一般異議申述期間の末日から2か月以内に裁判所と個人再生委員に再生計画案を提出する必要があります。
また、東京地方裁判所の場合は、再生計画案と一緒に、分割弁済表(具体的な弁済方法をまとめたもの)も提出する必要があります。
- 申し立てから18週間後
18.再生計画案の決議
再生計画案を提出すると個人再生委員から意見書が提出されますので、これを基に裁判所が書面決議や意見聴取するか判断することになります。
書面決議または意見聴取の決定がされると、その旨が債権者に通知されますので、債権者は回答書または意見書を裁判所に提出する方法で、再生計画案に「同意」または「不同意」の返答を行うことになります。
債権者から結果を踏まえ、個人再生委員から,再生計画を認可するか不認可とするかについての意見書が提出されます。
そして、個人再生委員の意見書を踏まえ、裁判所が再生計画案を認可するか不認可とするかの決定が下されます。
- 個人再生委員の書面決議:申し立てから20週間後
- 債権者の回答期限:申し立てから22週間後
- 個人再生委員の意見書提出期限:申し立てから24週間後
- 裁判所の決議:申し立て25週間後
19.弁済開始
再生計画案が認可されると再生計画を基に弁済が開始することになります。
弁済の開始時期は、再生計画が認可された月の翌月から開始することが一般的になりますが、弁護士報酬と重複しないように再生計画を定めることも可能になります。
また、履行テストで振り込みを続けていた費用は、個人再生委員の報酬を差し引いた金額が返還されることになります。
- 再生計画が認可された月の翌月(弁護士と相談し調整は可能)
20.完済
再生計画通りに全ての弁済が完了すれば晴れて借金は完済となります。
弁済計画は3年間で組むことが一般的ですが、弁済期間中に支払いが出来なくなると再生計画自体が取り消しされてしまう可能性がありますので絶対に滞納しないように注意してください。
- 再生計画に基づき3年以内に完済する
個人再生の手続きに必要な書類
最後に、個人再生の手続きに必要な書類を一覧で整理したいと思います。
再生手続きの申立書に添付する書類
- 委任状
- 戸籍謄本
- 世帯全員についての住民票の写し(3ヶ月以内)
- 債権者一覧表
- 収入・主要財産一覧表
報告書の添付書類
- 給与明細(3ヶ月分)
- 源泉徴収表(2年分)
- 課税証明書
- 確定申告
財産目録
- 預金通帳(過去1年間)
- 積立金証明書
- 退職金見込み額証明書
- 保険解約返戻金に関する証明書
- 車検証
- 土地登記簿謄本
- 建物登記簿謄本
- 固定資産評価額証明書
- 不動産業者の査定表
- 住宅ローン契約書
まとめ
個人再生の流れと手続き期間について解説を行いました。
今回ご紹介したように、個人再生の手続きは非常に複雑であり長期間に及びます。そのため、全ての手続きを自分一人で行うことは困難であるため早々に弁護士に相談するようにしましょう。
その際、以下の地域別の法律事務所からおすすめの弁護士事務所を選択頂ければと思います。