個人再生は、自宅を手放すことなく借金を大幅に減額できる債務整理の一種になります。借金の返済目処が立たない人にとって、自宅を手放さずに借金が減額できることは非常にメリットであると言えます。
しかしながら、全員が必ず個人再生で借金を完済できる訳ではなく、中には失敗してしまう人もいます。
では、なぜ個人再生が失敗してしまうのか?原因と対処法について解説をしたいと思います。また、本記事では、個人再生が失敗してしまうよくある事例もご紹介させていただきます。
Contents
個人再生が失敗する原因
個人再生が失敗する原因は、「裁判所から個人再生の許可が出ない場合」「債権者から過半数以上の反対意見が出た場合」「弁済が出来なくなった場合」に集約されております。
それぞれ、どのようなケースで個人再生が失敗してしまうのか詳細を解説したいと思います。
裁判所の許可決定が出ない場合
個人再生は裁判所から許可決定が出た人だけが借金を減額し弁済することが可能になります。そして、裁判所が許可決定を出す条件は以下を満たしておく必要があるのです。
次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
- 再生手続の費用の予納がないとき。
- 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
- 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
- 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
参照:民事再生法第25条
また、個人再生の申請するためには以下の条件も合わせて満たしている必要があります。
- 借金の返済が不能な状態になりかけている
- 将来的に安定した収入が見込める
- 住宅ローンを除く債務総額が5,000万円以下
上記のいずれかでも該当していない場合は、裁判所が個人再生の許可決定を出すことはありませんので、事前に個人再生の条件に該当しているか確認する必要があります。
個人再生の条件は「個人再生の条件とは?該当する基準と種類から向いている人を解説」にて詳しく解説をしておりますのでご参照ください。
債権者の半数が個人再生に反対した場合
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つの種類があります。
給与所得者等再生の場合は、減額できる金額が小規模個人再生よりも小さくなりますが、その分、債権者の同意が不要で個人再生を行うことが可能になります。
一方、小規模個人再生の場合は、借金を大きく減額できる反面、債権者の半数以上が個人再生に同意しなければ許可決定が出ないのです。
仕事でリストラされてしまったが、家族の生活を維持するためにも自己破産は避けたい。そのため、個人再生で借金を減額したいが、一時的に無職であったことから債権者の半数以上から反対意見が出てしまった。
上記の場合は、債務者の収入が安定することで債権者の反対意見を沈静化することが可能と言えますので、再就職するまで個人再生の申請を停止させた方が良いでしょう。
個人再生の弁済が出来なくなる場合
個人再生は原則3年で弁済する必要があります。
しかしながら、3年という期間は短いようで長いものです。勤め先の会社が倒産する可能性もありますし、両親の介護が原因で満足に仕事が出来ない状態になる可能性もあります。
上記のように、個人再生で減額された債務を滞納してしまうと、債権者から「再生計画が履行されていない」という理由で個人再生の取り消しを申し立てられてしまいます。
結果的に、個人再生の取り消しが認められてしまうと”失敗”になってしまうのです。
個人再生が失敗してしまう事例
ここでは、個人再生が失敗してしまう事例をご紹介したいと思います。
裁判所から許可決定が出たことから無事に個人再生の弁済は開始したが、弁済開始から1年6ヶ月後、勤め先の会社が倒産してしまい無職となってしまった。
個人再生後、弁済を続けていたが、父親の認知症が悪化し介護が必要な状態になってしまった。仕事も欠勤することが増えてしまい収入は大幅に減少。結果的に弁済が難しい状態になってしまった。
上記の通り、弁済開始直後は順調に支払いが出来ても、3年の間に収入が減少してしまい個人再生に失敗する事例が多いと言えます。
個人再生が失敗する確率
ここまで、個人再生が失敗する原因について解説を行いましたが、実際にどれほどの人が個人再生に失敗するのか?確率について考えてみたいと思います。
まず、個人再生の許可決定が出る前に失敗する確率ですが、これは手続き方法を工夫することでほぼ失敗することなく進行させることが出来ます。
裁判所の許可決定には、個人再生の条件を満たしておく必要があります。逆に言えば、条件さえ満たしていれば誰でも個人再生をすることが可能になります。また、債権者からの反対意見については、給与所得者等再生を選択することで個人再生は可能になります。
上記の通り、裁判所の許可決定前に失敗することは”ほぼ”ないと言えますが、書類不備などで手続きが進行しない場合もありますので、まずは弁護士に相談する方が良いでしょう。
次に、個人再生後に弁済が難しくなり失敗するケースですが、3年の間にどのような変化があるかは、人によって変わることから、一概に確率を算出することは出来ないでしょう。
個人再生が失敗した時の対処法
個人再生が失敗した場合の対処法についてもご紹介したいと思います。
家族などから援助を受ける
転職など一時的に収入が途絶えるような場合は、家族などから援助を受けることで弁済を継続することができるでしょう。
中には、個人再生を担当した弁護士が一時的に費用の立替を行なってくれるケースもありますので、返済が難しくなった場合はすぐに相談することをおすすめします。
ただし、長期的に立替をしてもらうことは難しいと言えますので、一時的な対応に留めておくことをおすすめします。
支払い期間の延長を交渉する
個人再生は最大5年まで返済期間を延長することが可能になります。
ただし、誰でも返済期間を延長できる訳ではなく、教育費にお金が必要になった場合や家族の医療費が必要になった場合など、やむ得ない事情が発生した場合に限られます。
裁判所も返済期間の延長に関しては寛容に対応してくれることから、中期的に返済が難しい場合は弁護士を通じて裁判所に相談することをおすすめします。
自己破産を検討する
家族の援助や支払い期間の延長でも弁済が出来ない場合は、自己破産を検討するしかなくなります。
自己破産は必要最低限の資産を手元に残すことは出来ますが、原則、全ての債務は平等に扱われることから住宅ローンも免責対象になってしまいます。
従って、個人再生では自宅を守ることができでも、自己破産では手放す必要が出てしまうのです。さらには、保険や退職金なども債権者に返済する必要出てきます。
個人再生よりもデメリットが大きい自己破産の利用はよく検討をしてから実施すべきと言えるでしょう。
まとめ
個人再生が失敗してしまう原因と対処法について解説を行いました。
借金を大幅に減額できる個人再生ですが、失敗すると借金が減額されないだけでなく、自己破産するまでに発展する可能性があります。
従って、個人再生をする前に事前に弁護士に相談することは必須と言えます。
その際、個人再生に強いおすすめ弁護士事務所を「2019年版|個人再生の評判が良いおすすめ弁護士事務所を5社まで厳選」にてまとめておりますのでご参照ください。
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