個人再生では、退職金も清算価値に含める必要があります。従って、退職金が高額になる場合は、個人再生後の弁済額も増加してしまう可能性があるのです。
とは言え、個人再生をしても退職金の全額を清算価値に含める必要はありません。
個人再生で退職金が清算価値に含まれる基準は、「退職予定がない人で8分の1」、「退職予定の人で4分の1」、「既に退職金を受け取った人は全額」となります。
上記の通り、退職時期と個人再生を行う時期によって清算価値に含める基準が異なることから詳細について解説を行いたいと思います。
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個人再生における清算価値保証の原則とは?
そもそも、清算価値保障の原則とは何か?と疑問に感じる人も多いでしょう。
清算価値保障の原則とは、再生計画における弁済率が、破産における場合の配当率以上でなければならない。という原則を指しております。
少々分かりづらいので詳細をお伝えします。
通常、自己破産をする場合は、破産者の財産は処分され債権者に配当されることになります。その際、債権者に実際に配当する金額の割合が「配当率」となります。
個人再生では、実際に財産が処分されることはありませんが、仮に財産を処分した場合の価値を算出し、配当率以上に弁済する必要がある。と定めたのが「清算価値保証の原則」という訳です。
より簡単にお伝えすれば、個人再生は、破産した場合の配当以上の金額を弁済する必要がある。ということになります。
個人再生では受け取り見込みの退職金も清算価値に含まれる
清算価値には「退職金見込み額」も含まれることになります。
従って、退職する予定がない人でも、現在受け取れる退職金見込み額が、清算価値に含まれることから資産が増加し弁済額も増加する可能性があるのです。
ただし、退職金見込み額の全額が清算価値に含まれる訳ではありません。
この理由に、退職金は会社の業績によって、将来受け取れる金額が変動するリスクがありますので、今現在受け取れる金額が保証されているものではないためです。
では、実際に、退職金が清算価値に含まれる割合をお伝えします。
- 退職予定がない人が個人再生をすると退職金の8分の1が清算価値
- 退職予定がある人が個人再生をすると退職金の4分の1が清算価値
- 既に退職した人が個人再生をすると退職金の全額が清算価値
退職予定がない人が個人再生をすると退職金の8分の1が清算価値
個人再生を行う時点で、退職予定がない人は、退職金見込み額の8分の1が清算価値に含まれることになります。従って、退職金見込み額が100万円の場合は12.5万円を清算価値に含めるだけとなります。
これは、先ほどお伝えしたように、「将来受け取れる退職金は保証されたものではない」という理由から「8分の1だけを清算価値に含めれば良い」ということです。
退職予定がある人が個人再生をすると退職金の4分の1が清算価値
個人再生を行う時点で、退職予定がある人は、退職金見込み額の4分の1が清算価値に含まれることになります。従って、退職金見込み額が100万円の場合は25万円を清算価値に含めることになります。
これは、民事執行法152条の差押禁止債権によって、退職金債権のうち4分の3以上を差し押さえすることを禁止しているため、既に退職金の受給額が決まっている場合も4分の1以上を清算価値に含めることが出来ないのです。
既に退職した人が個人再生をすると退職金の全額が清算価値
個人再生を行う時点で、既に退職金を受け取ってしまった人は、退職金の全額を清算価値に含めることになります。従って、退職金が100万円の場合は、100万円全額が清算価値に含まれてしまいます。
これは、既に退職金を受け取った時点であなたの現金・預貯金になりますので、「退職金がいくらだったのか?」という判別ではなく、現金・預貯金の金額として計算されてしまうためです。
従って、個人再生を予定している場合は、退職金を受け取る前に実施した方が良い。ということになります。
清算価値の算出は再生計画の認可決定時
退職金を受け取っているか否かによって、清算価値に含める割合が変動しますので「どの算出がどのタイミングで清算価値を算出されるのか?」は重大な問題となるでしょう。
結論、清算価値の算出は「再生計画の認可決定時」となります。
従って、個人再生の申立からおおよそ1ヶ月程度で開始決定の認可おりますので、退職金を受け取るタイミングは認可決定以降に調整するようにしましょう。
会社から借入がある場合の退職金の取り扱い
会社や労働組合などから有利な金利や返済条件で借り入れをしている人も中にはいることでしょう。多くの場合は、「退職や転職時に、借入残高を一括返済または退職金との相殺をすること」と定められていると思います。
そのため、実際に受け取れる退職金は会社からの借入金を相殺した後の金額となります。
では、個人再生をする場合は、「相殺前の退職金を清算価値に含めるのか?」「相殺前の退職金を清算価値に含めるのか?」疑問に感じることでしょう。
結論、会社からの借入は、相殺後の退職金に対して8分の1を清算価値に含めることになります。
従って、退職金が100万円の場合で、会社から60万円の借入がある場合は、40万円の8分の1である5万円を清算価値に加えることになります。
また、裁判所によっては、8分の1をした場合の退職金が20万円以下である場合は清算価値に含める必要がない。としているケースもありますので担当する弁護士に相談すると良いでしょう。
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労働基準法に違反しないことが大前提
退職金の相殺は、労働基準法に違反しないこと前提になります。そもそも、労働基準法によって退職金の天引きや相殺は本来禁止されているのです。
ただし、「労働者の過半数以上で組織する労働組合」や「労働者の過半数以上を代表する者」と、「賃金控除協定」を締結している場合は、例外的に退職金から天引きや相殺をすることが可能になります。
従って、会社と賃金控除協定を締結していない場合は、退職金から相殺することは出来ませんので、「相殺前の退職金」を清算価値に含める必要があります。
個人再生時に退職金の金額を証明する方法
既に、退職が決定し退職金見込額を通達された人であれば、いくら退職金を貰えるか分かると思いますが、退職予定がない人はどのように退職金の見込み額を調べたら良いか分からない人も多いことでしょう。
そこで、退職金見込額を調べる方法を2つお伝えさせていただきます。
退職金見込額証明書を発行してもらう
退職金の見込額を調べる方法は「退職金見込額証明書」を会社から貰うことになります。
ただし、「退職金見込額証明書」を貰うということは、退職を考えている。と勘違いされるリスクが懸念されます。そのため、用途を聞かれたら「金融機関への融資申請用に必要です」と伝えるようにしましょう。
金融機関に融資の申し込みをする際に、「退職金見込額証明書」の提出が求められるケースもありますので、怪しまれずに済むことでしょう。
就業規則の退職金規定から計算する
退職金見込額証明書を貰うことが出来ない場合や、会社を介在させずに退職金見込額を調べたい場合は、就業規則の退職金規定から計算する方法があります。
就業規則は従業員がいつでも確認できる場所で保管されていることでしょうから、「退職金規定」を確認し自分自身でいくら受取できるのか計算してみましょう。
もし、計算方法が分からない場合は、弁護士に相談することで退職金見込額の計算を手伝ってくれることでしょう。
まとめ
個人再生をした場合、退職金も清算価値に含めることになります。ただし、退職金の全額を清算価値に含めるのではなく、以下の配分が清算価値に含まれる基準となります。
- 退職予定がない人が個人再生をすると退職金の8分の1が清算価値
- 退職予定がある人が個人再生をすると退職金の4分の1が清算価値
- 既に退職した人が個人再生をすると退職金の全額が清算価値
個人再生は非常に複雑な手続きであることから、自分一人で手続きを進めることは困難でしょう。そのため、以下の地域別の法律事務所から自分に合った弁護士を見つけることをおすすめします。