個人再生の手続きを進めるためには「安定した収入があること」が必須条件となります。従って、個人再生の手続き中や認可後に転職や退職をしても大丈夫なのだろうか?と不安に感じる人も多いと思います。
個人再生の手続き中は、履行テストなどを経て裁判所が安定した収入や弁済する能力があるかどうかを判断することになりますので、裁判所が許可すれば転職することに問題はありません。(退職して無職になるのは難しいでしょう。)
また、個人再生の認可後は、裁判所の管轄から離れることになりますので、しっかりと弁済を続けていれば同様に転職することが可能になります。
今回は、個人再生と転職について詳しく解説をしたいと思います。
Contents
個人再生の要件
まず、個人再生を行える人の要件からお伝えしたいと思いますが、そもそも、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つの種類が存在します。
個人再生の種類 | 主な対象者 | 要件 |
小規模個人再生 | 自営業者、会社員、公務員、パート、アルバイト |
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給与所得者等再生 | 給与所得者(会社員、公務員、パート、アルバイト)*自営業者は不可 |
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基本的には、個人再生は「借金総額が5,000万円以下」「安定した収入が見込める」この2点を満たしていれば利用することが出来るので条件は緩いと言えるでしょう。
個人再生の詳しい解説は「個人再生のメリット・デメリットを徹底比較!向いている人の条件とは?」をご参照ください。
個人再生が出来ない場合
ただし、全ての人が個人再生ができる訳ではありません。結局の話、裁判所の許可を得られなければ個人再生は失敗に終わってしまうことから裁判所の棄却要件についても確認してみましょう。
次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
- 再生手続の費用の予納がないとき。
- 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
- 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
- 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
参照:民事再生法第25条
上記のいずれかでも該当していない場合は、裁判所が個人再生の許可決定を出すことはありませんので、事前に個人再生の要件に該当しているか確認する必要があります。
詳しくは、「個人再生が失敗する原因と対処法をまとめて解説|よくある失敗事例付き」をご参照ください。
個人再生の手続き中に転職や退職をしたい場合
さて、個人再生の要件を確認したところで、「個人再生の手続き中に転職することは問題ないのか?」という点について解説をしたいと思います。
結論、安定した収入が確保できると裁判所が認めるならば問題ない。ということになります。
転職の場合は、事前に給与レンジを提示してもらえることから収入の想定が可能になるでしょう。そして、再生計画において無理のない弁済スケジュールを組むことが出来れば基本的に裁判所も認めてくれると言えます。
ただし、収入が大幅に下がるような場合は、個人再生が不認可になる可能性もありますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
また、退職して無職になる場合は論外です。安定した収入を確保することは出来ませんので、その時点で個人再生の手続きは中止となってしまいます。
個人事業主になる場合は注意が必要
個人事業主になる場合も注意が必要です。
個人再生の弁済は、3ヶ月に1回以上のペースで返済を続けることが出来るか?という点が重視されます。その際、個人事業主に新たになる場合は、過去の収入実績を証明することが出来ないため不認可になる可能性が高まるのです。
従って、個人事業主に転職する場合は、手続き中ではなく、個人再生の認可後にした方が良いでしょう。また、既に個人再生の手続き前に個人事業主になっている場合は、収入実績を証明できるようにしておきましょう。
個人再生の手続き後(認可決定後)に転職や退職をしたい場合
個人再生の認可後は、原則3年以内に弁済しなければなりませんが、認可さえ得られれば裁判所が関与することはありません。従って、滞りなく弁済を続けていれば転職をしても問題ないと言えます。
もし、個人再生が転職によって中止になることが不安な場合は、裁判所の認可が出た後に転職をした方が良い。と言えるでしょう。
それでも、やむ得ない事情から転職が必要な場合は、事前に弁護士に相談することをおすすめします。
個人再生における資格制限はあるの?
個人再生をしても資格制限は受けないため、士業や警備員などでも仕事に影響を与えることはありません。
ちなみに、自己破産をすると「士業」を中心に資格制限を受けることになります。資格制限を受けている期間は、業務従事することが出来ないため非常にデメリットになるでしょう。
資格制限を受ける職業は士業だけでなく、警備員や教育委員会の委員など様々な職業で資格制限を受けてしまうため、日常生活にも多大な影響を及ぼしてしまいます。
その点、個人再生の場合は、資格制限を受けないため「士業」などの人でも安心して依頼ができると言えます。
まとめ
個人再生と転職の関係について解説を行いました。
結論、個人再生の手続き中でも裁判所が許可すれば転職は問題ありません。また、認可後であれば全く問題なく転職が可能になりますので、出来れば個人再生の認可が出た後に転職する方が望ましいと言えるでしょう。
やむ得ない事情で転職が必要な場合は、事前に弁護士に相談し可否判断を仰ぐことをおすすめします。
個人再生は複雑な手続きを進めていく必要がありますので、経験豊富な弁護士に柔軟に対応してもらう必要があります。そのため、「2019年版|個人再生の評判が良いおすすめ弁護士事務所を5社まで厳選」をご参照いただき自分に合う弁護士事務所を見つけましょう。